【次世代型】7つの領域から考える非常食の最新事情

家庭や職場で最低でも3日分を目標に非常食を備蓄する動きが加速しています。たび重なる自然災害の発生が最大の要因ですが、被災者のニーズを商品化し、マスコミに取り上げられた次世代型非常食も話題をけん引しています。非常食の最新事情をピックアップしていきます。即買い商品ばかりです。






1)非常食の最新事情はどうなっている?

阪神淡路大震災に始まった、非常食へのニーズは全体から見れば小さなものでした。平成最大の自然災害といわれる東日本大震災を経て、被災者のニーズを商品化する動きは加速していきます。また、人々の漠然とした不安も相まって、地震があると非常食が売れるという、需要が発生しました。

そして、災害によって非常食は消費され、被災生活での困り事や実際に食べたことでニーズが生まれ、そのニーズを商品化する非常食の進化するサイクルが完成しました。

この他に、条例の制定による法人の備蓄需要の増加が後押ししたこと、賞味期限による買い替え需要が見込めることなどが、少子化による人口減で先細りの日本国内で食品業界のみならず、包装資材を含めた各種業界にとって久々の成長分野の登場となり、非常食を取り巻く環境は企業からも消費者からも熱い視線を集めています。

2)非常食の最新事情:その1「健康志向」

日常生活においても、健康志向は高まっています。栄養のバランス、塩分や油分、食べる量などはもとより、健康のためのサプリメントや健康食品など、食生活だけでも随分と気をつけている方が増えています。ところが自然災害の発生により日常生活を突然中断された被災者の方々は、避難生活を余儀なくされてしまいます。

そして被災者の方から、ご自身の経験を踏まえて、多くの要望が出されたのが食事の塩分でした。非常食も対応は早く、塩分を減らしたものは数多く販売されています。

この他にも栄養バランスを考慮して、野菜のおかずが増えたこと、水分不足に配慮して、汁物メニューも増えてきました。全体にメニューが増加し、食事のバリエーションが豊かになってきました。この他、ご飯ものを中心に、小盛りサイズも多くなりました。避難生活では、衛生面から調理したものは食べきる必要がありましたが、お子さん用メニューとして小盛りサイズが登場し、お年寄りや女性にも好評です。

主婦

3)非常食の最新事情:その2「レトルト食品の充実」

【1】新製品はレトルト

近年の非常食で躍進したものはレトルト食品です。レトルト食品の包装資材の改良と高温高圧の殺菌技術の向上により、缶詰と同じかそれ以上の賞味期限の商品が増えてきました。その恩恵により、現在では缶詰よりレトルトで備蓄をされる方も増えています。缶詰に比べて軽量で、保存する場所も必要なく、食べた後のごみの処理も簡単なため、新規参入の業者はレトルト食品で新製品を発売しています。

【2】調理不要でそのまま食べられる

レトルト食品の新製品の特徴は「調理不要」「容器不要」です。レトルトといえば電子レンジか湯煎で温めるイメージがありますが、ほとんどの新製品は温め不要のため災害発生時のライフラインが停止した状況でも、そのまま袋から食べることができます。もちろん水も不要です。

非常食といえば最近ではアルファ化米のイメージが強いのですが、アルファ化米は最低でも飲料水が必要ですが、この点を克服したところが、革命的ともいえるレトルト食品の進化の原動力です。

4)非常食の最新事情:その3「缶詰の個性化」

【1】1個10000円の缶詰

レトルト食品の充実で押され気味の缶詰ですが、非常食以外に活躍の場を広げようとしています。「缶つま」の高級路線「缶つま極」の登場です。普通の缶詰から見れば比較的高価格の「缶つま」ですが、1個10000円の気仙沼産ふかひれ、三重県産あわび、北海道のたらばがにも登場しました。これは単に高級路線というわけではなく、地域限定の高級食材を使用することで「缶つま」のブランドを高め同時に食材のブランドも高める戦略です。

【国分グループ本社株式会社:缶つま極】http://www.kokubu.co.jp/brand/001/008/

【2】第3セクターの缶詰製作所

また、地域の魅力を缶詰で発信しているところもあります。高知県の「黒潮町缶詰製作所」は第3セクターの会社で、社長は町長が兼務です。ここ黒潮町は発生が予想されている南海トラフ巨大地震で全国一の高さの津波に襲われると予測されました。

そこで津波予測を逆手に取って地域おこしに備蓄用非常食を利用しています。缶詰製作所を立ち上げ、主菜からデザートまでそろった防災備蓄用セットと、高知県自慢の四万十川のうなぎ、土佐はちきん地鶏、一本釣カツオなどを詰め込んだギフトセットを製造販売しています。ちなみにロゴマークの旗にある34Mは予測された津波の高さ34.4mからきています。

【株式会社黒潮町缶詰製作所:防災備蓄缶・グルメ缶】https://kuroshiocan.co.jp/products/unagi_kabayaki/

ピースサインの主婦

5)非常食の最新事情:その4「セット販売の増加」

【1】1人分×3日分セット

最近は非常食をセット販売する動きが加速しています。今、話題になっているセット販売は「1人分×3日分の献立」です。条例により、備蓄が努力義務とされた企業が購入すると見込まれています。個人向けでも重宝されています。

3日分の献立としてセットされているので、購入する内容を考えることなく、保存も簡単で、配布をするときにも一度に終わってしまいます。また、ケースもおしゃれなデザインが多く、書類棚や机に保管ができるように、A4サイズとこだわっている商品もあります。

【2】発熱剤をセット

被災された方の要望で多かったのは、温かい食事でした。汁物はもちろんですが、ご飯も温かい方を好まれる方は多くいらっしゃいます。駅弁で発熱剤がセットになった商品がありますが、まさにその発想です。

特に丼物は炊き込みご飯と異なり、ご飯と具を別々に温め、食べるときにのせる必要があります。これに発熱剤をセットすることで、1食分を完成させました。ドライカレーはアルファ化米、カレーライスは発熱剤をセットと住み分けも始まりました。

【ホリカフーズ株式会社:レスキューフーズ 一食ボックス】http://www.foricafoods.co.jp/rescue/rm_boxset.html

【株式会社非常食研究所:HOT!ぐるべん7備蓄王】http://www.hijyoshoku.com/guruben.html

【3】他社製品をセット販売

他社製品とセットにして、販売する動きも始まりました。多くの企業は、ご飯もの中心とか、汁物専門とか、デザートが主力と自社製品だけで1食分を構成できませんでした。被災者の方の「同じものばかりで飽きた」といった声に応えて、献立として構成されたセットが登場しました。

単品で購入すると割高になってしまうものも最初からセットにしてあると、手ごろ感のある価格になりますし、選ぶ手間の必要がないところも消費者には好評です。ニッチな商品とも言えますが、今後売り方次第では伸びる分野だと思います。

【ファシル株式会社:しっかりまんぞく。非常食セット3日分・2年保存】http://facil.shop-pro.jp/?pid=105024336

6)非常食の最新事情:その5「日常食を非常食へ」

ビスケットやクラッカーの保存缶化の流れはご承知の方も多いと思います。この他に、カロリーメイトや水、野菜ジュースなど長期保存可能商品がずいぶんと増えてきました。食べ慣れたものを非常食にする「日常食を非常食へ」の流れは勢いを増しています。

この他に、携帯化することで非常食として利用できるものも増えています。梅干しやコーヒーなどです。従来あるものを持ち出し袋にセットする方も多いのですが、敢えて非常食として提案することで、商機を見出しています。

【株式会社バンブーカット:備え梅】http://sonae-ume.jp/#sonaeru

【ユニバーサルトレーディング株式会社:コーヒーブリューワー】https://growerscup.universal-trading.jp/

7)非常食の最新事情:その6「美食を備食へ」

セブンネットで取り扱っている「東京備蓄」をご存知の方も多いと思います。有名なシェフを起用した商品で、パッケージなども目新しく人気の商品です。実はこの商品のコンセプトが、次世代型非常食なのです。「美食を備食へ」という考え方は、「災害で大変な時だから美味しいものを食べて元気になろう。」という発想です。災害の時は将来の不安や様々なことで、食べ物も喉を通りません。

そこで「腹が減っては戦はできぬ」とばかりに、「とりあえず美味しいものでも食べて落ち着きましょう。お腹が減っていてはイイ考えも浮かびません。美味しいものでお腹も心も満たして、元気出して進もうよ。」と呼び掛けています。コンビニエンスストアの自家発電導入や、配送車両のルート設定にAIを取り入れ、災害時でもできるだけ平常営業ができるように積極的に取り組んでいるセブン‐イレブンらしい商品です。

【セブンネットショッピング:東京備蓄】https://7net.omni7.jp/general/sp/161228tokyobishoku

乾パン 

8)非常食の最新事情:その7「異業種参入ⅤS非常食専門店」

【1】防災用品店が商品を開発

防災用品を扱う会社がレトルト食品を開発し、非常食業界に参入しています。きっかけは東日本大震災の時、お客様から非常食の注文が多かったとか、扱う商品に、「こんなものがあったらいいのに」が多いようです。自社で開発したり、レトルト食品の企業と共同開発したり、方法はそれぞれですが、もともと顧客はあるので一気に増えてきました。

異業種ゆえに食品関係では思いつかないような発想の商品が多く、また販売方法も「売りたくて作った商品」なので、思い切った作戦を展開しています。

【杉田エース株式会社:イザメシシリーズ】https://izameshi.com/

【横浜岡田屋:HOZONHOZONボウサイシリーズ】https://www.okadaya-bousai.com/2017/10/11/hozonhozon_bosai_series/

【2】迎え撃つ非常食専門店

一方、非常食専門店は長年培った技術と信用を武器に盤石の構えです。隙あらば参入してくる異業種に負けじと、その座に甘えることなく製品の品質向上とニーズを先取りし、アレルギー対応セットやハラール認証の取得、食品添加物を無添加など、商品のラインナップを充実させています。

防災用持ち出し袋にセットで入れることによって、まず消費者の方に手にしてもらうところから始まり、怒涛の攻めを展開しています。ネットショッピングの時代だからできる戦略であり、専門店はどうしても消費者と接点を持ちにくかった点を克服できる時代に突入しました。

【株式会社グリーンケミ―:7年保存クッキー3種】http://www.greenchemy.jp/cn15/pg177.html

【アルファー食品株式会社:安心米】http://www.alpha-come.co.jp/product/longlife.html

【3】ユーザーの戦い

ネット上では、ユーザーによる非常食の戦いは凄まじいものがあります。食レポあり、自身の備蓄公開、オリジナルレシピと、とどまるところを知りません。特に、一押し商品を語るものは熱く、缶入りパンの「缶deボローニャ」と「パンのアキモト」は、両社とも「ローリングストックの時期が待ち遠しい」と評判です。

この他提案として、「野菜カレー」の表示があるレトルトカレーは非常食用ではなくても冷たいまま食べられるとか、アウトドアメーカーのモンベルの「フリーズドライご飯シリーズ」が、調理時間が3分と短く、調理なしでもそのままスナック風に食べられると紹介しているものもあります。お年寄りの方に「ハウスのやさしくラクケアシリーズのプリン」や阪神淡路大震災の時のニーズからうまれた、「水にひたすだけでできたてのおもち」もおすすめです。トレーと割箸、戻し用の保存水もセットです。

また、乾パンも多く語られています。非常食を語るには外せないものですが、どうしても水なしでは食べられないと紹介されてしまいます。ところが乾パンも進化しています。「乾パンに金平糖が一緒に入っている」ものもあります。金平糖が唾液の分泌を促進して、乾パンを食べやすくするためだそうです。

ヒトの好みは十人十色。食べ物は人を熱くします。

【mont‐bellモンベル:白ご飯、リゾッタシリーズ】https://webshop.montbell.jp/goods/list.php?category=333000

【ハウス食品株式会社:やさしくラクケアシリーズ】https://housefoods.jp/products/special/rakucare/index.html

【北陸製菓株式会社:備食カンパン】http://hokka.jp/product/hokka/preserved/kanpan-survival-hardtack.php

オイルサーディンの缶詰

9)最新の非常食に関するQ&A

【Q1】どうして非常食の賞味期限が長くなったの?

食品の賞味期限を長くするポイントは、食品自体の滅菌と包装資材の改良が欠かせません。現在では、食品に添加物を使用することなく、高温高圧で滅殺菌をしています。また、包装資材はレトルト食品において酸素を通しにくい袋が、アルミパウチは4層構造のものが開発されました。これに加えて袋の中の酸素を窒素に置換し、脱酸素剤を封入することで、食品の酸化を防いでいます。

この他、飲料用の缶は缶蓋に腐食に強いポリエステルフィルムをコーティングし、長期保存を実現し、ペットボトルは本体を厚くし、表面に紫外線から保護するフィルムコーティングを施し商品化しました。缶もペットボトルも中の飲料を変えることなく、5年間保存の商品を誕生させた企業もあります。このように、食品加工技術、包装資材の改良、食品充填時の工夫、酸化防止と様々な技術によって、非常食の賞味期限は長くなっています。

【Q2】これからの非常食はどうなるの?

全体の流れとしては、保存期間、賞味期限がより長期化していくと思われます。そして「おいしい」と「あんしん」を中心に幅広いニーズにこたえるべく、より多くの企業が参入する余地があるといえます。今後「ものづくりニッポン」の底力を結集して一層「おいしい」「あんしん」を目指すと思います。

そして、もうひとつは価格の二極化が起こると考えます。現在の非常食の価格は、加工にそれなりの工夫をしているため、割高な商品もありす。これだけ災害が発生し、需要が高まれば消費者から低価格化のニーズが起こっても不思議ではありません。

一方「おいしい」「あんしん」を求めるニーズも存在し、日常生活と遜色ない商品を求めた場合、高価格化は否めません。よって、現在の日本の食生活と同じように価格は二極化していくと想像できます。

実際、お弁当のおかず用や個食用に賞味期限は短いのですが、レトルト食品は多くあり、また、フリーズドライの味噌汁も日常食や常備菜として購入される方も多いと思います。非常食が低価格になれば、非常食から日常食または常備菜への流れは自然といえます。

また、今後はまだ商品化されていない鶏のから揚げのような日常食をレトルト化するなど、ますます成長産業になることは間違いありません。そして、現在の日本で味わえる多国籍の味を楽しめるようになっていくと思います。日本で生活する各国の方々が独自のルートで仕入れている海外の材料を使用した海外の料理を商品化するなど、ガラパゴス化とグローバル化を併せ持つ業種となるでしょう。






この記事のポイント

【1】非常食は、最近の健康志向を反映し薄味のものや、野菜メニューが増加傾向にある

【2】レトルト食品は保存期間の長期化により、商品が充実し、缶詰は個性化している

【3】備蓄需要の増加によりセット販売が増え、発熱剤をセットにして簡便化をアピール

【4】日常食を非常食へ、美食を備食へ、どちらの流れも加速している

【5】防災用品販売店が非常食を開発し、非常食専門店も特化し、ともに進化している

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