平成30年最新版!火災時の避難訓練で大切な事を5シーン別に解説

火災の避難訓練は小さい頃から経験のある方も多いと思います。職場ではなかなか時間も取れなくて、学校の頃のような大規模な訓練は少ないのではないでしょうか。そこで、火災時の避難訓練で大切なことを徹底的に解説します。






1)避難訓練とは

避難訓練は火災、地震や津波などの自然災害、不審者などの犯罪などを対象として行います。特に火災の避難訓練は「消防訓練」とも呼ばれます。避難訓練の目的は以下の通りです。

(1)避難経路を覚え、災害時のパニックを抑制すること

(2)いざという時の手順を覚えること

人は経験したことがないことや、想定外の場面ではパニック状態になることがあります。個人でパニック状態になった場合、周りの人たちの協力により、落ち着きを取り戻すこともできます。しかし、不特定多数の人が集まる施設では、パニック状態はすぐに広がってしまいます。いったんパニック状態になってしまうと、被害は有り得ないほど拡大してしまいます。

ところが、そのような災害発生時に、施設の職員などが適切な対応をとり、明確な避難誘導をすることで、被害を最小限に食い止めることができます。落ち着いて対応する人がいれば、パニックを抑制できます。また、いざという時の手順を覚えていると、ほかの事案が発生した時でも落ち着いて対処できます。緊急事態が発生した時に、慌てず冷静に対処できることはいろんな場面で役立ちます。自分が施設の職員の立場ではなく、不特定多数の一人とか利用者の立場であっても、職員と協力して、パニックを回避し避難誘導される、またはその補助的役割を担うことができます。自分自身の安全と、周囲の被害低減を可能にします。

防災訓練

2)火災の避難訓練について

過去の大規模火災や地震に伴う火災で失った多くの犠牲を無にしないためです。

【1】どうして火災の避難訓練をするの?

消防法第8条に規定されています。「管理権原者は防火管理者を定め、消防計画を作成し、この計画に基づく消火、通報及び避難訓練の実施等、(中略)防火管理上必要な業務を行わせなければならない。」基本的に、管理権原者は、建物を所有または管理する人です。そして防火管理者を定めなければならない施設は複合用途防火対象物と防火対象物です。

複合用途防火対象物とは「学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、及び大規模な小売店舗など」を指し、防火対象物とは「多数のものが出入りし、勤務し、または居住する建物」を指します。また、この複合用途防火対象物と防火対象物は、消防法施行令により、特定防火対象物と非特定防火対象物に区分されています。

大まかに言って、特定防火対象物は学校以外の複合用途防火対象物で、保育園、幼稚園、介護施設、サウナ、カラオケボックス、地下街などが含まれます。非特定防火対象物は防火対象物と学校や寺院、重要文化財、駐車場、公衆浴場などが含まれます。そして、消防訓練を行うときは、所轄の消防署などへ届出なければなりません。届出をしていないと、消防署が訓練の実施を把握できないため、防火管理業務の不履行として刑事責任を問われることがあるからです。

【2】火災の避難訓練の種別

火災を想定した避難訓練の種別と内容は以下の通りです。

(1)消火訓練……消火器や屋内消火栓を使用した初期消火の訓練

(2)避難訓練……建物内に発災を知らせ、避難、誘導及び避難器具の訓練

(3)通報訓練……発災の確認後、建物内に周知し、消防機関に通報する訓練

特に、消火訓練と避難訓練は、特定防火対象物は年間2回以上、非特定防火対象物は消防計画に定めた回数を実施しなければなりません。また、上記の3つを個別に行う場合を「部分訓練」といい、3つ全部を一度に行う場合を「総合訓練」といいます。

【3】実際の訓練

施設によっては、総合訓練はもとより部分訓練も、実施が難しい場合もあります。そんな場合は簡略したスタイルでも防災教育として、自発的に訓練を実施したと認められます。

【例】

・出社時に消火器の位置を確認する
・朝礼時に消火器の使い方を確認する
・昼休憩に避難訓練を行う
・退社時に避難訓練を行う

また、実際に不特定多数の人がいる状態では、職員の訓練も行えないので、店休日や開店前に実施している商業施設も多くあります。

3)シーン1:総合訓練

では、全体の流れを確認してみましょう。先ほどもお話ししましたように、消火・避難・通報の全体的な訓練を総合訓練といいます。

(1)目標

火災発生から消防隊に引き継ぐまでを想定通りに行うこと

(2)必要な準備

設置されている消防設備の確認(設備・位置・使用方法)。実際に火災報知機を鳴らす場合は、消防設備会社に立ち会ってもらうことや、警備会社にも連絡がいくので、事前に知らせておくこと。また、近隣の方も事前に知らせておく。訓練実施日を職員に知らせておく。

(3)火元の準備:三角コーンや貼り紙を準備する

(4)役割の分担を明確にしておく

指揮者・発見者・通報者・館内放送者・初期消火を行う・避難誘導・避難者の点呼・消防隊に引き継ぎを行う

このような準備を行い、内容を事前に消防署へ届出て、はじめて実施することになります。担当のところでも触れましたが、もう一度流れを確認します。火災の発見→責任者に通報→消防署に通報→館内放送で施設内に通報→初期消火→避難誘導→避難場所に集合→避難者の点呼→消防隊に引き継ぐでは、部分訓練で個別の内容を見ていきましょう。

消火訓練

4)シーン2:消火訓練

【1】初期消火とは

「初期消火とは、炎が天井に移る前まで」です。それ以降は断念し避難します。消火器を使用した場合と屋内消火栓設備を使用した場合を分けているマニュアルもありますが、消火活動は消防隊に引き継ぐことを避難訓練の目標としていますので、「初期消火で消す」と思い込まずに、安全に避難できるタイミング、すなわち「炎が天井に移る前」で避難しましょう。

【2】消火器と屋内消火栓設備の使用

三角コーンや貼り紙で火元を準備した場合は、設置してある消火器や屋内消火栓設備を使用する動きを行って、終了です。消防計画によっては火災を発見した職員が初期消火する場合と、職員で組織された自衛消防隊が駆けつけて消火活動を行う場合があります。いずれにしても初期消火は大切なことなので、できれば全員が消火器の扱いを確認することが望ましいとされています。

毎年訓練を行っているとマンネリ化するので、たまには大掛かりな訓練も必要です。かなり難易度は高いのですが、実際にオイルパンで火を燃やして、消火器や屋内消火栓設備を使用して、放水訓練をすることもあります。必ず事前に消防署に相談して、アドバイスを受けましょう。消火訓練の一環として、署員の方の説明や未使用の消火器など提供を受けることもできます。防災教育として、職員全員が消火器を扱えるようにすることは大切なことです。火を使わないまでも、期限切れが近い消火器を使用するなど工夫して、ぜひ消火器の取り扱いを一度は体験しましょう。

5)シーン3:避難訓練

【1】火災の発生を知らせる

自動報知設備のベルが鳴る、またはスプリンクラーの起動で確認した場合と、目視で発見した場合が想定されます。機械設備で確認した場合は、確認のため現場に消火器を持参して急行し、火災を発見した場合は「火事だ~火事だ~」と2回大きな声で叫びます。目視で発見した場合も同様に、大きな声で叫びます。詰所などに戻り、防火管理者(訓練指揮者)に火災発生を報告します。

【2】的確な避難誘導

(1)経路の選択

火災発生時に経路の選択は、生死を分けます。

・火元のフロア及び直上階を最優先で避難させましょう。
・火災現場近くを通らない経路を選択しましょう。
・エレベーターを使用しないことを徹底します。
・安全に地上の避難場所まで誘導することが目標です。

施設によっては、屋外避難階段や屋内避難階段が設置されているところもあります。

・屋外避難階段は、煙の影響が少なく、安全性が高い。
・屋内避難階段は、防火扉等が作動していれば、階段に煙が拡散しないため安全。

このような特徴を把握し、経路を選択し、避難誘導を行います。

(2)明確な指示

明確な指示は避難する人の心を落ち着かせます。パニックを抑制し、被害を最小限にする大きな効果があります。

・大きな声でどこからどこへ避難するかを具体的に指示します。

・ハンカチなどを鼻と口に当て、姿勢を低くして避難するよう指示します。

・ハンドマイクの使用も効果的です。

【3】避難器具の使用方法の確認

避難はしご、救助袋などが建物に設置されています。設置されている器具とその使用方法を熟知する必要があります。また、いつでも使用できる状態であることが大切です。

避難訓練のたびごとに使用するのは大変だとは思いますが、いざという時のために、避難はしごをおろしてみるとか、救助袋を広げるなど、点検と使用方法の確認を含めて実施することは、ちょっとした事ですが防災意識の向上につながります。

【4】自力避難困難者の搬送

何らかの理由により、自力での避難が困難な人が発生した場合の想定も必要です。背負う・抱きかかえる・担架などにより搬送します。

・背負う場合は1人に対して1人で対応します。

・抱きかかえる場合は1人に対して1~2人必要になります。

・担架による搬送は、1人に対して2~6人必要です。

細かいことを言えば避難困難者の状態によって、どの方法で対応するほうがよいとか、対応する人数の都合とかあります。また、担架を準備する必要も発生しますので、訓練の規模に応じて、行いましょう。エレベーターを使用しないが大原則ですので、階段を利用しなければなりません。ケガの無いよう充分注意しましょう。

電話かける

6)シーン4:通報訓練

【1】消防署への通報

消防職員が立ち合った場合、訓練中に実際に119番通報することが可能です。

以下は実際のやり取りの例です。

消 防:はい、119番消防です。火事ですか?救急ですか?

通報者:火事です

消 防:場所はどこですか?

通報者:○○市○○町○丁目○番○号 ○○です。

消 防:その建物は何階建てですか?燃えているところは何階ですか?

通報者:○○階建ての○階がもえています。

消 防:逃げ遅れた人はいませんか?

通報者:〇名が逃げ遅れています。

消 防:何が燃えているかわかりますか?

通報者:○○が燃えています。

消 防:近くに目標になる建物はありますか?

通報者:○○の前です。

消 防:あなたのお名前と連絡先を教えてください。

通報者:○○です。電話番号は○○○-○○○○です。

消 防:わかりました。すぐ行きます。

ゆっくり正確に話すことが大切です。防火管理者や通報担当者以外の誰もが話せるように、見本を作って、電話の近くに貼っておくなどしましょう。また、できるだけ固定電話から通報しましょう。消防で通報を受けた際に、聞き取る前に地図上で確認できるように、設定されています。火災の状況によっては携帯電話からの通報もやむを得ませんが、細かいことですが時間の短縮と、正確に伝えるために大切なことです。覚えておきましょう。

【2】館内放送等による建物内の周知(聞き取れたか)

消防署への通報終了後、館内に知らせます。放送設備があれば使って練習しましょう。放送する文面をマイクの前に貼っておくと安心です。

(1)例:こちらは防災担当です。ただいま〇階○○付近で火災が発生しました。消火担当は直ちに消火作業に当たって下さい。職員は担当者の指示に従って非難してください。エレベーターは使用しないでください。

ゆっくり、正確にはっきりと話しましょう。消防への通報と同じく、担当者以外も全員が放送できるように練習しましょう。

7)シーン5:訓練実施結果の検証

避難場所に集合し、点呼して人数を確認し、消防に引き継いで訓練終了です。

訓練を終了すると、立ち会った消防署の方と訓練結果の検証を行います。その際確認する内容例です。

・避難に要した時間はどのくらいか?前回と比較してどうか?

・消火器や屋内消火栓設備の操作に不備はなかったか?

・避難経路は安全・適切だったか?

・避難指示は的確に伝わったか?

・避難誘導時や搬送時の危険性はなかったか?

・消防署への通報は適切に行われていたか?

・通報・消火・避難誘導の連携がスムーズにできたか?

訓練の規模や内容によって多少異なりますが、基本的なポイントは変わりません。大切なことは、前回と比較してどうか?という点です。訓練担当の方は毎回工夫を凝らして訓練を実施するのですから、職員も全員で真剣に取り組むことが重要です。消防署からの指摘を次回に活かせるように、検証を行いましょう。

消火設備

8)火災の避難訓練に関するQ&A

【Q1】訓練がマンネリ化してしまいます。何かアイディアはないの?

消火器の使用方法を消防署の方に指導していただくことを文中で紹介していますが、この他にも、「煙ハウスの体験」も可能です。迷路のように仕切ったテントの中に無害の煙をたいて、1人ずつ通過するというものです。消防署に依頼すると、訓練当日にテントの組み立てから全ておこなってもらえます。

この他、「消防車両の見学と防火服の試着」「救命講習」など各消防署で各種講習を準備しています。また、自治体によっては簡単な防災講習を行うところもあります。事前に消防署や自治体に相談してみましょう。その時、日程に余裕を持たせ、お互いに繁忙期を避けるなどの配慮を行うとスムーズに話が進みます。毎年ではなくても、イベント的に行うと職員に印象深い訓練として記憶されます。ぜひ関係機関に相談してみてください。

【Q2】消防署への通報ってどんな感じ?

実際に経験された方もおられると思います。以前、救急搬送の電話をかけたことがありますが、火災の状況ではなく、病人の名前や年齢、性別、症状をきかれたことが異なるくらいで、文中の例とほぼ同じでした。

経験から言うと、ポイントは「言うこと」より「聞くこと」です。消防の方からきいてこられるので質問に答えていく形で進みます。通報すると緊張しますが、聞かれたことを的確に答えることを忘れないでください。わからないことは「わかりません」と答えることも大切です。最初の「火事ですか?救急ですか?」の問いかけで「何から言えば?」とか「間違えないように」とか緊張していた自分が「答えればいいんだ」とホッとしたことを覚えています。






この記事のポイント

【1】避難訓練の目的は、避難経路の確認・パニックの抑制・手順を覚えること

【2】火災の避難訓練は消防法で定められ、所轄の消防署に届出てから実施する

【3】火災の避難訓練は消火訓練・避難訓練・通報訓練と大規模な総合訓練がある

【4】消火器や屋内消火栓、避難器具の使用方法を実際に使って確認する

【5】職員全員が消火器の使用方法や消防署への通報ができるようにする

【6】所轄の消防署に相談して充実した訓練にする。今回の反省点を必ず次回に生かす

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