【避難生活】災害時の実態と避難生活で役立つノウハウ5選

災害によって自宅での生活が困難になった場合、避難生活をおくる可能性があります。阪神淡路大震災の経験や、東日本大震災で被災された方の体験された避難生活から、多くの学ぶべきことを発信しておられます。阪神淡路大震災の頃からの避難生活の課題と、避難生活で役立つノウハウをご紹介します。



1)避難生活の国際基準がある?

海外の避難生活事情を見ていくと、日本の課題がよくわかります。

【1】熊本地震のテント村

熊本地震の時にテント村が開設されたことをご存知でしょうか。この取り組みは登山家の野口健さんが中心となって行われました。海外の被災地の事情に詳しい野口さんから見た日本の避難生活は、あまりにも劣悪な環境で、せっかく災害を生き延びてもそれ以上に過酷な避難生活を、見過ごせないという思いからの行動でした。

このテント村の特徴は避難生活の国際基準を参考にしたことです。1家族に1つのテントが割り当てられ、寝る場所と生活する場所を分けるようにしました。また、トイレの数をふやして、男性用1に対して女性用は3の割合にしました。

【2】避難生活の国際基準「スフィア基準」

災害や紛争時の避難所について、国際赤十字が提唱する最低基準を「スフィア基準」といいます。これはアフリカのルワンダ難民キャンプで多くの人が亡くなったことを受けて、20年前に国際赤十字などが作りました。

今では難民キャンプだけでなく、災害時の避難所の国際基準としても使われています。 ・世帯ごとに十分に覆いのある生活空間を確保する ・1人当たり3.5平方メートルの広さで、覆いのある空間を確保する ・最適な快適温度、換気と保護を提供する ・トイレは20人に1つ以上。男女別で使えること。男性と女性の割合は1対3にする 3.5平方メートルは約2畳分の広さです。

日本では1人当たりの広さを「立って半畳、寝て1畳」といっていましたが、1畳では寝返りも打てません。また、快適温度と換気はエアコンによる温度調節を意味します。そして、トイレの男女比の女性は男性の3倍時間が必要だからというのが理由だそうです。

2016年に、イタリアで発生した地震の時、イタリア政府の対応により、発生から72時間以内に家族ごとにテントやベッドが支給され、衛生的なトイレも整備されたそうです。その他の災害時でもイタリアではテントの支給などが遅れる場合は、ホテルを借り上げて避難所として政府が費用を負担するそうです。日本でも、「スフィア基準」を災害時の基本計画に取り入れた自治体があります。南海トラフ巨大地震が想定されている、徳島県です。避難所運営マニュアルに「スフィア基準」を盛り込んでいるそうです。

悲しむ男性

2)避難生活の実態って?

では、実際の日本の避難所ではどのような状況でしょうか。

【1】「スフィア基準」と体育館生活

災害が発生すると、ニュース映像などで、体育館に避難された方々が映し出されます。発生してすぐは仕切りもなく、毛布にくるまっておられるシーンが映し出されます。避難所の問題点として、「プライバシーが無い」「エコノミークラス症候群の不安」「感染症や食中毒の発生」が連呼され、環境問題として、「避難所から出る大量のゴミ」「トイレ問題」がクローズアップされます。「スフィア基準」と無縁の体育館生活はいつになったら解消されるのでしょうか。

【2】女性・子ども・高齢者のストレス

避難所で最も弱い立場にあるのは、災害弱者といわれる人たちです。障害のある方や、女性と子ども、高齢者の方は弱い立場ゆえに強いストレスにさらされます。時間が経つと徐々に高齢者の方を残して、人数が減っていきます。高齢者の方はなかなか自分で行き先を見つけられないことも多いのですが、そうでない方たちは、居づらくて出て行かれるのだそうです。切なくて言葉になりません。

災害によって日常を失ってしまい、誰もが慣れない生活でストレスを抱えているのは同じですが、声の大きい人が強い立場をとり、情け容赦なく自分の考えを通してしまうのです。食事を摂り、体を休める空間で、避難生活から生活再建を準備するはずの避難所は「常に外的社会生活の場」になってしまいます。そこに弱者の居場所はありません。我慢をするか、出ていくか二者択一に追い込まれてしまいます。

【3】エアコンは贅沢?

「スフィア基準」のところで少し触れましたが、1家族に1つのテントが確保され、最適な温度と換気、保護が提供されます。電気を必要としないエアコンのついたテントが支給されます。なかなか完璧に作動しないこともあるそうですが、これが国際的な最低基準です。

避難所の体育館にはエアコンは設置されていません。冬の寒さはストーブで、夏の暑さは大型扇風機で乗り切ります。扇風機の風が行き届くためには、せっかく設置された仕切りのカーテンを全開にしなければなりません。プライベートを犠牲にする必要があります。 日本では、日常生活でもエアコンはゼイタクと考える方も多くおられます。

不健康だといわれる方もまだまだいらっしゃいます。猛暑対策で全国の小中学校にエアコン設置費用が、国の予算から出されて、やっと100%設置に目途が立ちました。市町村によっては、「小中学校のエアコンはゼイタク。他に優先順位の高いものがある」として、国の予算が出されるまで設置が見送られ続けてきたところも多くあります。

3)避難所の環境を改善するためには?

【1】人道憲章と人道対応に関する最低基準

「スフィア基準」は、正式には「人道憲章と人道対応に関する最低基準」といいます。冒頭に「人道憲章」を掲げています。「災害や紛争の避難者には尊厳ある生活を営む権利があり、援助を受ける権利がある。」「避難者への支援については、第一にその国の国家に役割と責任がある。」このように個人の尊厳と人権保障の観点から、避難者はどう扱われるべきかを示しています。

日本政府の避難者に対する援助は間接的なものです。政府として避難者を支援するのではなく、自治体がそれぞれの住民を支援する手助けをする立場をとっています。そして、災害が発生すると、それぞれの省庁の立場から協力し、支援、指導していきます。あくまで主体は市町村です。統括する都道府県、支援する政府といった構図です。 「基本的人権の尊重」は日本国憲法にうたわれています。被災者になっても基本的人権は失われてはなりません。「人道支援」という言葉もあります。困っている人を助けることに理由は要りません。プッシュ型の支援が功を奏していますが、扱う物資と人的支援を今一度考え直す必要があります。その時期に来ていると思います。

【2】「避難所格差」「被災地格差」

以前の「自治体格差」 時に被災地では「避難所格差」「被災地格差」ということが言われます。メディアによく取り上げられる避難所や被災地は、支援も多く受けられ待遇が良いというものです。道路の寸断で最初の支援が遅くなる地域や、その後の支援も届きにくい避難所があることも事実です。ところが、それ以前に「自治体格差」があります。

あまり表面化していませんが、阪神淡路大震災を経験した関西圏は、もしもの備えが充実しています。住民レベルはもちろんですが、行政も公園に簡易トイレ用を設置できるスペースを確保したり、備蓄に力を入れています。 わかりやすい例が段ボールベッドです。避難所でのエコノミークラス症候群予防や様々な理由により、段ボールベッドの導入を求める専門家は多くいらっしゃいます。

では、段ボールベッドはいつ、どうやって届けられるのでしょうか。この段ボールベッドの備蓄は基本的にありません。注文を受けてから、業界団体の中で対応できる企業が製造して届けます。 ただしこれには前提条件があり、「事前に防災協定を結んだ市町村」が対象です。協定を結んだ市町村からの要請があってから製造されます。災害発生時の避難所は人も多く、1人当たりの場所も確保できない制約がありますが、発生から72時間でベッドが支給されたイタリアに比べて、この現実をどう受け止めればよいのでしょうか。

太陽光発電 住宅

4)避難生活で役立つノウハウ3つ

避難生活で役立つノウハウをご紹介します。ご存知のものもあると思いますが、今一度ご確認ください。

【1】ノウハウ1:停電時に太陽光発電を設置している家庭は電気を使用できます

北海道胆振東部地震の際、ブラックアウトによって大規模停電が発生しました。その時、資源エネルギー庁からのお知らせで、「停電時の住宅用太陽光発パネル自立運転機能について」がありました。自宅の屋根などに太陽光発電パネルを設置している家庭では、太陽光発電パネルの「自立運転機能」を使うと、停電時に少しですが電気を使うことができるというものです。

かなり詳しく手順も説明してあります。実際に使用された方は、「冷蔵庫と携帯電話の充電ができた」と喜んでおられます。 停電は何かと不自由ですが、冷蔵庫の電気だけでもあれば食品のロスが防げ、そして携帯電話のバッテリーの充電ができれば、心にゆとりが生まれます。ぜひ、太陽光発電パネルを設置されている方は確認され、自宅に取りつけてあるパネルの取扱説明書を読んで、不明な点があれば設置業者やシステムメーカーにお問い合わせください。

【経済産業省:資源エネルギー庁「停電時の住宅用太陽光発パネル自立運転機能について」】

http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/news/20180906.html

【2】ノウハウ2:無料Wi‐Fi統一SSID「00000JAPAN」

スマートフォンは充電が困難な場合に備えて、機能を必要最低限に絞ってバッテリーを長持ちさせる「緊急省電力モード」など非常用節電モードが搭載されています。また、携帯電話各社は災害時にそれぞれのWi‐Fiスポットを無料開放する仕組みを2014年に導入済みです。統一SSID「00000JAPAN」で接続できます。

【3】ノウハウ3:ペットボトル活用術

ペットボトルのキャップに穴をあけて、シャワーとして使う方法はよく知られています。手を洗う時など、節水になります。この他、ペットボトルに水を入れて、日中車の中や、黒いビニール袋に入れて置いておくと、温水になります。調理の際ガスコンロの節約になります。またシャワーに使えば温水シャワーになります。温かいボトルのままタオルでくるんで、湯たんぽとしても使用できます。

ペットボトルの容器は、カッターなどで簡単に切ることができるので、食器や漏斗として使うことができます。くれぐれも切り口に気をつけてください。また、実際に使ってみると、自分なりのアイディアも浮かびますし、いざという時に思い出します。非常持ち出し袋の点検も同様です。休日に挑戦してみてください。

5)避難所生活で役立つノウハウって?

避難所についたら世帯ごとに受付で届出をします。避難所を退所するときも届出をして、移動します。避難所は住民の代表の方で構成される運営委員会が避難所を運営していきます。困りごとなどは運営委員の方に相談し、自分のできる作業にかかわっていきましょう。

【1】避難所でのマナーとルール

自治体ごとに避難所でのマナーとルールを守るように呼び掛けています。主なものを挙げていきます。

・お互いのプライバシーを尊重しましょう。

・室内は原則として火気厳禁、禁煙です。

・ゴミの分別収集を徹底し、ごみ集積場は清潔に保ちましょう。

・トイレは共有施設です。汚してしまったら自分できれいにしましょう。

・お年寄りや身体の不自由な方、乳幼児を抱えた方など、要援護者への気配りを心掛けてください。

・救援物資の配給が決まったら、秩序ある配分を心掛け、要援護者を優先して配給しましょう。

【2】避難所生活で健康に過ごすために

厚生労働省が「避難所生活で健康に過ごすために」呼び掛けています。

(1)水分・塩分補給をこまめに行いましょう

避難所生活ではトイレの問題などがあり、どうしても水分を控えがちです。水分が不足すると、冬でも脱水症状を発症し、エコノミークラス症候群や血管障害になりかねません。 また、同時に塩分も補給しましょう。

(2)手を清潔にし、うがい、歯磨きをしましょう。必要な時はマスクを着用しましょう。

食中毒の予防とかぜの予防を心掛け、感染症予防に努めましょう。マスクを着用して、アレルギーの原因のホコリを避けたり、かぜによる咳をしている時など周りの方にうつさないように、気をつけましょう。 (

3)薬で困っている場合は医師、薬剤師、保健師に相談しましょう。

服用している薬を避難するときに持ち出せなかったり、なくなってしまったりしたときは、遠慮なく、相談しましょう。血圧の薬など体調にかかわるものは、服用を勝手にやめることは、よくありません。また、避難生活で体調不良になり、処方薬が合わなくなる場合もあります。体調が悪くなる前に専門家に相談しましょう。薬の名前などがわからない場合でも、対応できます。

トイレ 漏れそう 男性

6)避難生活に関するQ&A

【1】トイレ問題ってどうにかならないの?

阪神淡路大震災の時から、最大の問題といわれ続けてきました。改善の動きを紹介します。

(1)国土交通省による「快適トイレ」推進の動き

国土交通省は2016年10月から入札する土木工事に「快適トイレ」の設置を求めています。働き方改革の一環で建設現場における環境改善が目的です。「快適トイレ」は男女ともに快適に使用できるトイレで、主な仕様は決まっています。

・水洗の洋式便座

・ニオイ逆流防止機能

・電源不要の照明設備

・二重ロック等施錠機能

・衣類掛け等のフックまたは荷物置き場(耐荷重5キロ以上)

・男女別を明確にし、入り口の目隠しを設置する。

・サニタリーボックスと鏡付きの洗面台設置

・便座除菌シート等衛生用品を準備し、トイレットペーパー予備置き場を確保する。

この取り組みには、追記があります。このような取り組みが、全国の自治体へ広まり、すべての建設現場の環境改善につながることを期待します。また、レンタルが中心の建設現場の仮設トイレが快適トイレに変わることにより、災害時に避難所等に持ち込まれる仮設トイレも変わるといった副次的効果も期待されます(原文まま)。省庁主導の利点をいかした、働き方改革からの災害対応を見据えた着目にナイスです。

(2)移動式トイレカー

神奈川県海老名市の優成サービス株式会社は警備会社です。神奈川県全域で工事現場やイベントなどの警備業務を行っています。もうひとつ、会社の大きな柱が移動トイレカー事業です。トイレカーのレンタルや販売を行っており、工事現場や障がい者イベント、被災地でも利用されています。

「バイオトイレカー」と名付けられた車両は公道を走行し、目的地に移動します。トラックの荷台部分が、おがくずを利用した水を使用しない洋式便座トイレの個室になっていて、冷暖房完備で、屋根についたソーラー発電を利用しておがくずを処理します。車両によって設備は異なりますが、おむつ替えシートや緊急用呼び出しボタンの他、福祉車両は車いす用パワーリフトを完備しています。災害時はシャワー室として利用できる車両もあります。 現在、北海道苫小牧市は2トン車タイプ、静岡県富士市は4つ個室のついたトレーラータイプを購入しています。富士市の場合、購入費用の約8割以上をインターネットのクラウドファンディングで募集することにより賄いました。



この記事のポイント

【1】難民や災害時の避難生活は、「スフィア基準」により国際的な最低基準がある。

【2】日本の避難所に「スフィア基準」は適用されず、災害弱者のストレスは特に強い。

【3】避難所の環境を改善するため、「スフィア基準」の適用が求められる。

【4】避難生活で役立つノウハウを知り、できれば休日にやってみると良い。

【5】避難所生活では、ルールとマナーを守り、災害弱者への気配りを心掛ける。

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