地震時に最低限準備しておきたい非常食の知識総まとめ

自然災害を天変地異とも言います。現代では「天の変化」に対しては、気象観測によりかなり確率の高い予報ができるようになりました。一方「地の異変」はほとんど予測できません。地震の時に最低限準備しておきたい非常食について栄養士のアドバイスを参考にまとめました。もしもに備えて始めましょう。






1)地震による災害の特徴とは?

非常食を準備するためには、災害の特徴を把握することが大変重要になります。

【1】地震は予測不可能ないつ起こるかわからない災害

地震は台風や大雨に比べて、発生も今後の動きも予測することが非常に困難な災害の代表的なものです。地震の主な原因は、目に見えない地下のプレートやトラフ、断層が動くことです。また、連動する地殻変動であっても、いつどのようなタイミングでどの範囲が動くか全くわかりません。現在多くの関係者の努力によって解明されている部分は多いのですが、発生してわかる地殻変動もまだ多いのが現状です。

このように、地震は発生だけでなく、その後の地殻の動きが予測できないために、誰もが次の計画を立てることができず、将来への不安は増幅するばかりです。例えば台風や大雨は雨雲が去ってしまえば、雨はやみます。どんなに甚大な被害が発生しても復旧作業に取り掛かることができます。ところが、地震は本震の揺れが大きければ大きいほど、余震も大きな揺れが長期間続き、次の動きを始めることができません。被害の把握もままならず、将来への動きも封じられて、人々はどうすることもできません。

そして、この続く余震と復旧作業の計画を立てられないことは、避難生活を長期化させてしまいます。いつになったら自宅に帰ることができるのか、本当に元の生活に戻れるのか、焦燥感は明日への希望を蝕んでいくばかりです。

予測不可能な地震は警戒する期間も限定しません。大雨や台風は6月から10月、雪害は冬季のみの発生に限られます。ところが地震は過去の事例を見ても、関東大震災は9月、阪神淡路大震災は1月、東日本大震災は3月に発生しています。発生した時間帯も様々です。晴れた日の日中に発生するわけではなく、どんな天気の、いつの時間帯に起きるかわかりません。つまり自分や家族がどこで何をしている時に発生するかわからないのです。被災した時に家族はバラバラということもあるのです。

【2】地震による災害は同時に複数発生し被害が拡大する

大地が揺れることは、人々を「現実の世界が根底から覆される」感覚にしてしまいます。精神的な不安を与える地震の揺れは、実際に被害ももたらします。揺れによる建物の倒壊、道路の寸断は交通網を遮断し、日常生活を止めてしまいます。同時に火災の発生、土砂崩れのほか、場所によっては液状化現象も発生します。

また、建物や構築物が損壊することによる被害は想定をこえます。大雨や台風などの時は浸水被害を防ぐために対策を行い、場合によっては2階以上に避難することで、被害にあわないようにすることもできます。ところが、地震は建物の強度以外に安全性を保障するものはありません。高い建物だから大丈夫というわけではなく、震源から遠く離れていても長周期地震動の被害も発生します。この他、建物の壁の崩落や亀裂、堤防の損傷による決壊や河川の氾濫(地震氾濫)など、何が起きても不思議ではありません。

そして、懸念されるのが津波の発生です。海の近くや海底が震源であった場合、津波が発生します。海の水がすべて押し寄せ、あらゆるものを海に持ち去ってしまいます。第2波、第3波とより高い波が押し寄せ、川を遡上して海から離れた場所にまで到達します。寄せる波の恐ろしさと、引き波の脅威は言葉が見つかりません。

火災や津波の発生は、私たちの避難する場所を限定します。一時(いっとき)避難場所や、津波避難施設などに素早く避難する必要があります。そして、その状況が落ち着けば、避難所へと移動します。つまり避難場所から避難所へと地震の発生から状況に応じて移動していかなければなりません。

【3】停電などの2次災害の発生と影響

大規模地震の発生と同時に停電も発生します。現代社会において電気はライフラインの動力源であり、停電は社会システムの全面的な停止を意味します。自助努力によって回避できる企業や人はほんの一握りで、ほとんどの人々は現実を受け入れるしかありません。電気が止まってしまうと、水道も出なくなり、空調設備も稼働しません。

混乱は拍車をかけます。安否確認のために電話の使用が急増し、つながりにくい状態になります。安全確認のため交通機関はすべて運行を停止します。高速道路も閉鎖され、停電による信号機の停止と、街は機能を失います。物流は止まり、わずかに営業している店舗もやがてその活動を停止せざるを得ません。

乾パン

2)非常食の基礎知識

非常食とはいったいどんなものなのでしょうか。

【1】非常食って何?どれだけ準備したらいいの?

非常食とよく言いますが、実際に販売されている時は「長期保存用」とか「備蓄用」とか表示されています。賞味期限が長いものも多いのですが、最低でも1~2年のものを揃えましょう。例えばスーパーマーケットで販売している缶詰は製造から3年間の賞味期限がほとんどです。非常食として販売されているものでなくても、十分です。

非常食は調理が一切不要でそのまま食べられるものと、少しの水またはお湯で調理可能なものや、短時間の加熱で食べられるものに分けられます。準備するときは1人1日3食分を3日分、できれば1週間分揃えます。

そして、非常食の基本として、食べきりサイズの個包装で食器不要のものをお願いします。衛生管理が目的です。避難所生活に冷蔵庫はありません。残したものは捨てるしかないのです。捨てるにしても、定期的に回収があるわけではないので、避難所はゴミも捨てにくいのです。ですから、食べた後のゴミのことも考えて準備しましょう。

(1)地震発生から3日間は調理不要の食品を準備する

地震の発生時用に、調理不要でそのまま食べられるものを3日分揃えることを忘れないでください。避難してすぐは、携帯食と呼ばれるものでもかまいません。例えばカロリーメイトブロックのように、開封すればすぐに手で持ったまま食べられます。極端な言い方ですが、立ったままでも食べられるビスケットやチョコレートでもかまいません。少しでも高カロリーのものをご準備ください。そして、順次パンやご飯などの主食と缶詰やそのまま食べられるレトルト食品を組み合わせます。

地震発生から3日ぐらい経過すると、自治体の支援もほぼ行き渡り始めます。ライフラインの中でも電気の復旧が最も早く、熱源として電気製品が使えるようになり、温かい食べ物を手軽に食べられるようになります。

また、飲料水は1人1日分3Lと言われています。この他に生活用水も必要になります。

(2)食事は楽しみです。スイーツも準備しましょう。

どんな時でも食事は楽しみです。美味しいもの、家族の好きなものを準備しましょう。できれば、普段から食べているものも揃えましょう。先ほど避難生活はストレスが多いとお話をしました。ストレス解消も食事の大切な役割です。好きな食べ物も大切ですが、スイーツやデザート系もご準備ください。甘いものは別腹ですよね。食欲がない時に、これだけでも食べられます。少量で高カロリーですので、避難生活にはおススメです。ぜひどうぞ。

食事による癒しは、温かいものでも期待されます。実際に多くの被災者の方が、温かい食べ物の効果を挙げておられます。また、カルシウム不足はイライラを誘うと言われています。ロングライフミルク、小魚やアーモンドを使ったおつまみも効果的です。常温保存は難しいのですが、地震の時に停電でダメになるからと、チーズを冷蔵庫から持ち出して避難された方もいらっしゃいます。

(3)野菜不足は野菜ジュースや野菜スープで水分と一緒に補う

そして、栄養バランスのとれた食事を目指します。理由は、体調管理です。今までの避難生活において、満足に食事を食べられなかったこと、野菜不足が原因の体調不良や、食物繊維が不足の便秘などが指摘されています。どうしても避難生活では、ご飯ものを中心にカロリーをとってしまいます。偏った食生活は、ただでさえストレスの多い避難生活に悪影響を与えます。野菜のおかずや、レトルトまたは缶詰の果物などをご準備ください。

この他に、もう1点、「野菜不足は不健康」と食生活に気を配っておられる方にとって、避難生活での食事の変化自体がストレスです。野菜ジュース、野菜スープ、果物ジュースを多めにご準備ください。水分も一緒に補給できることで、便秘対策にもなります。食事の時だけでなく、小腹の空いた時や水分補給として飲まれると、無理なく摂れます。

【2】高齢の方・お子さん・食事制限を必要とされる方々へ

高齢の方は、普段から食べ物に気をつけておられる方も多いと思います。元気な方でもそのまま食べられるお粥や雑炊を準備されると、食欲がない時に少しでも食べることができます。また、戻し用の水がセットになったお餅もあります。喉に詰まらせないようにご注意いただくと、少量で高カロリーを摂ることができますので、お薦めします。フリーズドライやカップに入ったみそ汁など、水分補給と柔らかめの食べやすいおかず(介護用)を揃えられると、あんしんです。梅干しなど保存のできる食べ物を準備しておかれると、食が進みます。

お子さんの食事は、年齢や状態に合わせてご準備ください。離乳食の方はストックを持ち出しやすい所において対応してください。避難生活はお子さんにとって大変なストレスです。お気に入りのキャラクター食器や好きなお菓子や飲み物を準備しましょう。食べすぎはよくありませんが、栄養不足になるより少しでも口に入るようにしましょう。

この他、アレルギーや生活習慣病のために食事制限を必要とされる方は、かかりつけの医師か自治体の栄養士、保健師にご相談ください。普段の生活でせっかく頑張って節制をしておられるのですから、できれば継続していただいた方が健康に過ごしていただけると思います。

支援物資はどうしても糖質中心になります。糖尿病の方には辛い生活になってしまいますので、ご自身でご準備ください。また、お元気な方でも避難生活で体調を崩すことはあります。食欲がない時もありますので、お腹にやさしいお粥や雑炊、麺類を準備されると安心です。

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3)地震時の非常食に求められるもの

地震の特徴として、発生の予測ができないことと、避難生活が長期化するとご説明しました。災害に備える非常食を地震対応にするためのポイントをいくつか挙げてみます。

【1】ポイント1:季節に配慮する

最初に、地震特有の現象として、余震が続くことが挙げられます。避難所ではもちろんですが、自宅などでの避難生活においても火の使用をなるべく避ける、またはご注意願います。次に、予測不可能な災害ですので、注意する期間を限定できないとご説明しました。この点に対応するためのポイントは、季節によって準備している非常食を入れ替えることです。

ローリングストックによって、補充してから消費するサイクルを確立する中で、まだ十分に賞味期限までの期間があれば、備蓄しておいて季節にあったものを入れて置きます。缶入りのおでんは1年中でも大丈夫ですが、携帯食としてチョコレートを準備された方は、やはり夏は避けられた方が無難です。この他レトルトの野菜スープも冬のポタージュ系は夏には今一つ食べにくいと思います。コンソメ味かビシソワーズ系に入れ替えられることをお勧めします。

そして、夏に対応するためのポイントは経口補水液など水分を多めに準備されることと、ゼリー飲料を取り入れられることです。パウチ容器で販売されていますが、現在では水分補給だけでなく、カロリーを摂取したり、ビタミンを摂り入れやすくなっている商品もあります。熱中症対策にぜひご準備ください。高齢の方用の商品もあります。ミネラルウォーターより微量栄養素も摂ることで、体調管理にも役立ちます。もちろん冬でも利用可能です。ご検討ください。

【2】ポイント2:避難生活の長期化に備える

発生の予測不可能な災害なので、季節によって入れ替えましょうとお話をしました。もう一点は、ライフラインの復旧の遅れに伴う避難生活の長期化に備えることです。地震による被害が大きければ、復旧作業も時間を必要とします。

電気の復旧は比較的早いとご説明をしましたが、電線の地中化が進んだ地域では、電柱のままの地域より復旧速度は遅いと想定されています。もちろん避難するときに、大量の食料を持って移動をすることは不可能ですが、たとえ1週間分であろうと、それを使い切るまで帰宅できない可能性が高いならば、それなりの準備が必要です。

ポイントはバラエティー豊かな食事を準備することです。毎日3回同じ食事も飽きてしまします。「これしか食べる物が無い」これだけで人は哀しくなってしまいます。大好きなものでも嫌いになってしまう、食べたくなくなるのです。ワガママはわかっているけれど、しかたがないのです。ですから、「選べること」がポイントになります。ガサガサと自分で選んで取り出すだけで満足なのです。

そして、できれば普段なら買わない物を1つでもご準備ください。豪華な食材を使ったものや、有名シェフや三ツ星レストランの缶詰、ギフト用品を自分用にでもかまいません。ストレス解消を言い訳にしたくはないのですが、「これがあるからがんばれる」ものが必要だと思います。

4)非常食の保管は「場所」と「重さ」に配慮

さて、非常食の準備が整いました。どこに保管したらよいでしょうか。従来は玄関に近い所でした。それ以外にも、準備したものを管理しやすいということで、キッチンの備蓄食料と一緒に置く方もいらっしゃいます。最近では、水害が頻発することから、2階以上に保管される方もおられます。日光のなるべく当たらない、ニオイの移らない、極端に湿度の高くならない場所に置かれることをお薦めします。

これ以外にも保管に関して大切なことは、分散です。地震によって家屋の倒壊や津波、火災も想定されています。倒壊した場合は運が良ければ取り出すことはできますが、津波や火災ではどうにもなりません。また、地震が発生した時点で、必ず自宅にいるとは限りません。

そこで、ガレージや自家用車、津波の想定外の地域に非常食や飲料水を分散させることも検討が必要です。可能であれば職場のロッカーに備蓄することも考えてみてください。ポイントは、賞味期限など管理ができることです。ガレージや自家用車の中は、季節によっては保管に適さない環境になることもあります。大切な食料ですので、無駄にしないように準備していきましょう。

保管に関して大事なことが、もう一点あります。持ち運び可能な大きさ、重さかということです。食料以外にも荷物はありますし、どちらかというと持ち出し袋の方が大切な方もいらっしゃると思います。

家族全員の非常食を1つにまとめる必要はありません。飲料水と食料を各人で運ぶことも考慮してください。持ち出し袋に入るものは一緒に入れても構いません。入らない食料は、キャリーを利用することもできますが、やはり両手は開けておきたいので、できるだけリュックサックなどで背負いましょう。

この時、非常よくすべてを缶詰で揃える場合とレトルト中心、また、4日目以降の食料をフリーズドライを多めに準備するのでは、荷物の重さが大きく異なります。あれもこれもの気持ちはわかりますが、荷物が重くて逃げ遅れないように注意しましょう。

使い捨ての食器

5)調理に必要なアイテムもまとめて保管しましょう

調理に必要なものは、非常食と一緒に保管しましょう。食べるときに便利です。缶詰はプルトップ型が主流になりましたが、保存期間が長いものは缶切りタイプの物もあります。昨今は缶切りを使ったことのない方も増えてきましたが、ローリングストックの時に実際に使って練習しましょう。

食品の入った袋を開けるためにハサミやナイフが必要になることもあります。缶切りやハサミがセットになったものでも、個別のものでもご準備ください。

【1】給水タンク・簡易浄水器、使い捨ての食器は非常食と一緒に準備

そして、調理に必要なもので最も大切なものは水です。水に関するものも非常食と一緒に準備しましょう。給水を受け取るための給水タンクは大きさも様々で、折りたたんで保管できるタイプを準備しましょう。この他、簡易型の浄水器もセットで準備します。飲料水の不足は命にかかわります。感染症に対して抵抗力も低下していますので、衛生面は可能な限り対策をすることをおすすめします。

特に体力のない、高齢の方やお子さんのおられるご家庭はご注意願います。また、この給水タンクと浄水器のセットは複数あっても困ることはないので、分散させた食料や飲料水などにも一緒に準備しましょう。

先ほど食器不要の食料をご準備くださいとお話をしましたが、落ち着いて食事を食べるようになると食器が必要になります。節水のためになるべく食器を洗わないで使用することになりますので、使い捨ての食器を箸やスプーンなどと一緒に準備をします。そして、お皿の上にラップを敷いて、取り替えて使うことで、使い捨てのお皿も複数回使用します。

【2】非常食を美味しく食べるための加熱剤と冷却剤も効果的

この他、温かい食べ物を食べるために、「加熱剤」をご準備ください。避難所では火を使えませんので、防災用品を扱うお店で「加熱剤」「発熱剤」を販売しています。少量の生活用水を加えるだけで熱を発して、食品を袋ごと温めます。

そのまま食べられるレトルト食品も増えてきましたが、やはり温めた方が心は満たされます。サトウのごはんのようなパック商品や、ペットボトル飲料も同様に温めることもできます。さらに、夏用に冷却剤を保冷袋とセットで揃えると便利です。デザートに準備した果物や、ゼリー、飲み物などを30分でも冷却剤で冷やすと、効果的です。暑い避難所生活で熱中症対策の飲み物が少しでも冷えていると、美味しくなりますし、飲みやすくなります。使用するときに手で叩くと冷却が始まります。






この記事のポイント

【1】地震は予測不可能で、被害も大きく、避難生活は長期化する可能性があります

【2】非常食は1週間分を準備し、最初の3日分は調理不要のものを用意しましょう

【3】非常食は、バランスのとれた美味しい食事で、体調管理も意識しましょう

【4】地震用の非常食は、ストレスを緩和します。好きなものも準備しましょう

【5】非常食と一緒に必要な器具を揃え、持ち出しやすい場所に保管しましょう

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