浸水の被害に備える為のチェックポイント5選

出雲神話に登場するヤマタノオロチ(八岐大蛇)は、暴れ川の異名をとる「斐伊川」を表現したものといわれています。スサノオノミコト(須佐之男命)によって退治され、「水を治めるものは天下を治める」を見事に語ります。今回は浸水の被害に備えるためのチェックポイントをあげました。確認していきましょう。






1)浸水被害の最大の原因は大雨による洪水

集中豪雨やゲリラ豪雨などの大雨は最も大きな要因ですが、浸水被害はその他の要素も関係しています。

【1】外水氾濫と内水氾濫

最近、記録的な大雨が降ると必ずといっていいほど、洪水が発生することが多くなりました。その洪水による浸水被害は「外水氾濫」と「内水氾濫」が原因です。「外水氾濫」は、降り続く大雨によって河川が増水して発生する洪水です。一方の「内水氾濫」はゲリラ豪雨のように、短時間に大量の雨が降ることで排水能力をこえてしまった雨水が低い土地に溜まってしまうことをいいます。

最近よく聞く「都市型水害」も内水氾濫の一種です。短時間に大量に降った雨が、舗装した路面で地下に浸み込むことなく、土地の低い方へと加速度的に流れていきます。都市では地下空間も最大限に利用しているため、低い土地の浸水以外に地下空間での被害も発生します。この他に、台風の時に発生する高潮によるものと地震による津波で発生する浸水害や、地震によって堤防が破壊されることで起こる浸水害があります。

【2】バックウォーター現象

近年では、「バックウォーター現象」による浸水害が多発しています。このバックウォーター現象は「背水」とも呼ばれ、河川の合流部分で起こります。多くの河川は、本川に支川が合流し、大きな流れとなって河口に向かっています。

バックウォーター現象は大雨が降った際に、支川から本川に合流できず停滞し、逆に本川から大量の水が逆流する現象を指します。逆流した水はその場で堤防を乗り越えてあふれてしまい、浸水害をもたらします。対策として、合流部分に水門や樋門を設置し排水ポンプで対応しますが、近年の異常気象に伴う大雨では、処理能力をこえることもあり、各地で被害が発生しています。

このバックウォーター現象は、台風の時に発生する高潮による川の逆流や、津波による海水の遡上とは明確に区別されます。高潮や津波による被害は河口付近や海岸部で発生し、「下流から被害が拡大していく海水による浸水害」ですが、バックウォーター現象は河川に両方を挟まれた河口より上流の地域で発生するからです。

いずれにしても大雨の長期化と台風の巨大化で、バックウォーター現象は規模も大きくなり広範囲に被害をもたらすと言われています。特に台風の接近時に、高潮との併発でバックウォーター現象が今後多発する可能性を指摘する専門家もいます。

洪水のイメージ

2)どうして浸水を防ぐ必要があるの?

では、なぜ浸水害を防ぐ必要があるのでしょうか。それは浸水害による被害が、想像以上に大きな被害をもたらすからです。都市型水害では地下空間からの脱出が生命にかかわります。一方、一般住宅では生命の危険を回避できても無残な爪痕を残します。

【1】床下浸水と床上浸水の違い

浸水被害の区分として、床下浸水、床下浸水という言葉を使用します。床下浸水は、洪水や津波が建物の床下にまで水が流入することで、一般住宅では0~50センチ以下の浸水を指します。また、床上浸水は建物の床上にまで水が入り込む状態を指し、一般住宅では50センチ以上で認定されます。

浸水の被害にあった家屋では、家の中に入り込んだ土砂や下水を含んだ汚泥はニオイがひどく、不衛生な状態になります。床下浸水の場合は、真っ先に床をはがして土砂、ゴミなどを取り除く作業を行い、清掃、乾燥、消毒などの後、大掛かりな補修工事をしないと、床下が腐ってしまい、そのまま家に住み続けることはできなくなります。また、床上浸水はほとんどの場合、住むことができなくなります。家財も水没し、被害は甚大で、床下浸水の7倍超の被害額ともいわれます。

【2】浸水害による精神的ショック

一般住宅は、床下を乾燥した状態に保つことが、家を長持ちさせるといいます。どんなに古い住宅でも床下は乾いた状態で、最近では床下換気扇を後付けされる家も増えてきました。床下以外でも住宅は湿気を嫌います。壁などにカビが生えたり、柱にシロアリによる被害が出る原因の多くは、湿気とも言われます。

ところが、浸水害は少しの被害であっても家屋を使用不可能にしてしまいます。人生最大の買い物といわれる「マイホーム」を失うことは、大きな損失です。経済的な損失もさることながら、精神的なショックは相当なものです。「洪水で流されてしまえば諦めもつくけど、目の前に家が建っているのに、中のものは全部ダメで、家にも住めないショックは大きい。」被災者の方が口にされた言葉です。床上浸水の被害は甚大ですが、床下もダメージは相当です。先ほどもお話ししたように大規模な改修が必要ですが、工事をしてもニオイなどが気になる場合もあります。

何より、一度浸水被害にあうと、しばらくの間は雨の音にも敏感に反応してしまいます。心配する必要のないほどの雨でも不安になり、また浸水するのではないかと落ち着かなくなります。お子さんの場合、家族から離れることを嫌ったり、おねしょが続くこともあります。安心できるはずの我が家が安全な場所ではなくなったショックは心に深い傷を残します。

3)浸水被害に備えるためのポイント1:危険性の確認

それでは、浸水の被害をなるべく避けるために、今からでも私たちにできることを確認していきましょう。チェックポイントをいくつかあげていますので、順番に見ていきましょう。それぞれ多くの自治体が呼びかけている内容に、海外の自治体が使用しているものも合わせて紹介しています。

【1】ハザードマップと過去の水害の記録を確認する

今回は浸水害を中心にお話をすすめていますが、お住いの場所によっては、土砂災害の対策を優先しなければならないお宅もあると思います。ハザードマップは浸水害のものと、土砂災害のものと別々に作成されています。日本は急傾斜地が多く、また沿岸近くまで山が迫っているところも多いので、とても危険な箇所に多くの人が住んでいます。

ハザードマップは最悪の被害を想定してあるものがほとんどで、実際に被害の発生した地域を重ねてみると、時間を追うごとに正確に記されていることが証明された事案もあります。また、過去の水害の記録は大変重要です。どんなに治水工事や大規模な改修工事をしても、記録的な大雨の場合は同じような場所で被害が発生します。地形上の特性から前線の雲の発生状況やいわゆる「雲の通り道」は昔から変わらないことが原因と考えられています。

最近では古地図から昔の川の流れを読み解き、土地の低い場所や水害の多発する地名を探される方もおられます。造成された土地を見てもわからないことも、古地図を見ることでわかることも多いといいます。

ハザードマップはインターネットでも確認することはできますが、防災の専門家はプリントアウトをして、家族の目につくところに常に貼っておくことが防災意識の継続につながると説いています。家族みんなで共有しましょう。

防災チェックする男性

4)浸水被害に備えるためのポイント2:常に信頼できる情報を得る

【1】いつでも最新の自治体の情報を収集する

アメリカの自治体によっては、地域住民に「確実な緊急システムは存在しません。ボイスメッセージやSNS、電子メールなど複数の方法で情報を収集しましょう。」と呼び掛けています。自治体の発信する情報をフォローできるように設定することと、普段でも緊急時でも、何か困ったことがあればいつでも自治体に電話するように何回も電話番号を記載したニューズレターを配布しています。

あなたは、お住いの自治体の連絡先をご存知でしょうか?家族の会社や学校の近くの地域の情報は確実に入手できますか?ぜひ、自治体の発信する情報をフォローできるようにしてください。また、使えるアプリは必ずダウンロードしてください。

【2】「川の防災情報」のスマホ版はGPSと連動し、氾濫時は緊急速報メールも配信

自治体の発信する情報以外に必要なものもあります。気象情報と河川の水位データです。一般に、日本では自治体のサイトに気象に関する警報・注意報と河川情報は掲載されています。お住いの自治体のサイトで見つからない場合は、都道府県のサイトをご利用ください。

近年、様々な事案において国から地方自治体に権限が委譲されており、道路や河川に関することも例外ではありません。しかし、道路や河川の管理は移譲されても緊急時の情報は一括して国土交通省が提供しています。ライブカメラの映像や、河川の水位をグラフ化したものも確認できますので、活用してください。

【国土交通省】http://www.river.go.jp/kawabou/ipTopGaikyo.do

このサイトは、全国の雨量分布がバンドレーダー雨量で表示され、河川の水位と雨量の状況、浸水想定区域図・水防警報発表地方の検索が可能です。また同じ画面にスマホ版・英語版、川の水位情報(危機管理型水位計サイト)のQRコードがあり、スマホ版はGPS機能を利用して、現在地の周辺の河川情報も入手が可能です。出先での急な雨にも対応可能です。

この他、平成28年9月から国管理河川の緊急速報メールを活用した洪水情報の配信を一部地域で開始し、現在は日本全域を対象にしています。緊急速報メールは氾濫のおそれがある場合(「氾濫危険水位」を超過した時点)及び氾濫が発生した場合に配信されます。

5)浸水被害に備えるためのポイント3:自分と家族の身を守る

・自宅または会社から避難場所までの経路をいくつか確認する

・家族が離れ離れになった際の集合場所を決めておく

・地元の電話がつながらない場合に連絡する離れた場所の友人や親せきを決めておく

これは、日本のものではありません。ご覧になっておわかりいただけると思いますが、大切なことは、世界中どこの国でも変わることはありません。大切な家族と自分の安全を確保するために、家族で確認し、情報を共有する必要があります。

特にアメリカでは、浸水害の後はなるべく家族が一緒に過ごすように勧めます。一人にならないように、哀しみをシェアし気持ちを和らげることこそとても重要だと諭します。よく、海外のニュースで被災地では人々が抱き合う姿を映し出します。アジアでは少ないのですが、欧米では多くの人々が身体を寄せ合い、いたわり合っています。すり減った気持ちを充電するかのような光景は、人々の傷ついた心をより伝えます。ヒトの身体のぬくもりは心を癒します。避難してたとえ、離れ離れになっても必ず会えるように万全の準備をしましょう。

【1】避難するときにやるべきこと、災害後の対応を確認しましょう

「ガスの元栓を閉めること」「主電源を切ること」などわかっていても、緊急時には慌ててしまいます。避難時にすることを目につくところに貼っておきます。

実は災害後も大切なことがあります。自宅に帰ってから入る前に全体を点検し、ガス漏れなどに気をつけます。そして、被害に関する届け出に必要な写真撮影をします。つい片づけたくなる気持ちはわかりますが、携帯電話やデジカメ、使い捨てのフィルムカメラでもかまいません。必ず被害状況を写真に残してください。ガスや電気を再び使用する前に、できれば専門業者に点検してもらってから使用しましょう。

土嚢を重ねる

6)浸水被害に備えるためのポイント4:自宅を洪水の被害から守る

自宅を洪水の被害から守るために、危険が迫ってくる前に行う内容をアメリカのニューズレターから拾ってみました。

・車を高台などに移動する方法とタイミングを検討する
・貴重品や洗剤などを浸水レベルよりも上の位置に保管する
・プロパンガスのボンベなどをしっかり固定する
・下水道の逆流防止の手当てをする
・道路、下水道、雨水溝カバーの落ち葉や堆積物を取り除いておく
・土のう、止水板の設置

貴重品を上の位置に保管することは日本でも強調されていますが、洗剤など(正確には洗剤など化学物質)を浸水被害から守ることも求めています。周辺や下流域への環境破壊も念頭にあると推測します。

この他に、ペットに関しては、緊急キット(持ち出し品)の項目にペットの食料と水の記載もあり、日本以上に「ペットは家族」であり、一緒に避難する守るべきものという強い意志を感じさせました。

7)浸水被害に備えるためのポイント5:災害時緊急キットの確認

アメリカでは、非常持ち出し品のことを「災害時緊急キット」と呼びます。オレンジ色のショルダーバッグに入っています。

【1】災害時緊急キットの主なものリスト

・電池式または手回しラジオと予備電池
・応急手当用品とホイッスル
・懐中電灯と予備電池
・ジッパーバッグに入れた重要な書類のコピー(保険の証書・銀行口座情報・その他連絡先・健康保険証)
・数日分の水と保存食
・個人の衛生用品
・温かい衣類、頑丈なブーツ、毛布、使い捨てマスク、ゴーグル
・処方薬
・子ども用快適グッズ(毛布、本、おもちゃ)
・携帯電話の充電器

そして、サイトのアドレスとともに、「ヒントとチェックリストを入手してください」と添え書きがしてあります。実際にアクセスすると暴風雨など自然災害の危険性に対する意識を高め、市民や企業の生命と財産を保護することを目的とした「大規模なマルチメディア公開意識啓発プログラム」のサイトでした。州政府、気象、消防、医療、公共交通、保険会社、一般企業などにより組織されています。このサイトの最初のページにはこんな言葉がありました。

「災害に備えて準備することは、家族や財産を保護するだけでなく、心の安らぎを提供します。災害を止めることはできませんが、生き残るための準備はできます。」

【2】主なチェックリストをご紹介

ここでは多くのチェックリストをダウンロードすることができます。主なものをご紹介します。

・緊急準備チェックリスト…持ち出し品や備蓄食用

・緊急連絡先カード

・ホームメンテナンスチェックリスト…損害保険の加入と屋根、ドア、配管、庭など場所ごとの確認項目

・予算内での準備プラン…災害時緊急キットの6か月ごとのメンテナンスと買い替えるときのアイディアの他、なるべく安く揃えるためのアイディア

・準備キットの買い物リスト…危険が迫ると良い買い物ができないので、普段落ち着いている時に買い物するようにアドバイス

・家族間の連絡プラン…普段から確認することや緊急連絡先カードの記入

・ペットのためのチェックリスト…ペットフードや必要なものの他に、今までの医療機関を受診した記録や、家族と一緒に写った写真がリストアップ

そして日本語対応のページにはありませんでしたが、英語のページの最後のチェックリストは「アメリカンフットボールの試合に関するリスト」でした。






この記事のポイント

【1】浸水被害の最大の原因は大雨による洪水で、外水氾濫と内水氾濫がある

【2】バックウォーター現象は川の合流部分で発生し、台風接近時は高潮と併発

【3】浸水被害は床下浸水と、床上浸水があり、どちらも被害は甚大です

【4】浸水被害に備えるためのチェックポイントを活用して、被害を最小限に抑えましょう

【5】日本だけでなく、海外でも自然災害に対する備えは実践されています

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