台風の準備で忘れてはいけない5つの知識【平成30年版】

台風によってどんな災害が発生し、その災害によって私たちの生活はどんな影響を受けるのでしょうか。平成30年、私たちは台風により大きな被害や影響を受けました。振り返ってみることで、台風の準備で忘れてはいけない知識を確認していきましょう。






1)平成30年の台風による被害

平成30年は巨大化した台風が複数回上陸しました。主なものをピックアップしてみました。

【1】台風7号:西日本豪雨

6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方も梅雨前線の影響による集中豪雨が発生しました。河川の氾濫、洪水、土砂災害など平成最悪の水害と言われ、特に広島県、岡山県、愛媛県では甚大な被害をもたらしました。

台風本体による雨雲より、停滞した梅雨前線に大量の水蒸気が流れ込んだことと地球規模で発生している気流の蛇行の影響によるジェット気流が原因で日本全国の15カ所で線状降水帯が発生し、雨量は各地で観測史上最大値を更新しました。

【2】台風12号:逆走台風

7月27日に小笠原諸島の東側を北上しその後西進、三重県伊勢市付近に上陸し、瀬戸内海を抜けて福岡県に再上陸し、29日には九州を南下し屋久島方面へ進みました。台風のカテゴリーは2でそれほど強い勢力のものではありませんでしたが、従来と反対の東から西に向かって移動したため、逆方向からの台風に経験が乏しく対応が難しかったことと、週末に重なったため、夏休みの花火大会などのイベントが中止・順延になりました。

神奈川県の海沿いの国道で高波により車両の立ち往生が発生したり、静岡県熱海市ではホテルのレストランの窓ガラスが高波で割れるなどの被害も発生し、この他三重県各地で強風による被害や大雨による床下浸水や道路の冠水が発生しました。

【3】台風19号・20号:連続発生

8月23日から24日にかけて、徳島県南部に上陸後、兵庫県姫路市付近に再上陸し、その後日本海に抜け秋田県沖で温帯低気圧に変わりました。19号20号と続けて発生しましたが、実際の被害は20号が中心で、カテゴリー3の暴風域を伴うものでした。

兵庫県淡路島の北淡震災記念公園の風力発電用風車が根元から倒れたほか、静岡県では高波の影響により、天竜川河口と駿河区の海岸から波にさらわれるなどの被害が発生しています。

【4】台風21号:関西国際空港が高潮で機能停止

9月4日高知県を暴風域に巻き込みながら、徳島県南部に上陸し、兵庫県神戸市付近に再上陸し、そのまま日本海に抜け間宮海峡付近で温帯低気圧になりました。カテゴリー5のスーパータイフーンで、日本各地で記録的な暴風となり、最大瞬間風速は全国の約1割の観測地点で観測史上最大値を観測しました。また、記録的な高潮も観測され、関西地方では観測史上最高潮位を超え、第2室戸台風(1961年)を超える記録と被害が発生しました。

関西では強風により、飛来物が窓ガラスを破ってマンション高層階に入り室内に被害が及んだ他、車両の横転、倒木が相次ぎ、停電と断水が広範囲に発生しました。この他、兵庫県では高潮による被害が多発し、浸水の他、コンテナの炎上や漂着が確認され、和歌山県では堤防が破壊され、工業団地で浸水被害が発生しました。

また、関西国際空港は高潮による空港施設の浸水と、走錨したタンカーの衝突による空港連絡橋の損傷により、空港の閉鎖と空港島の孤立及び施設のすべてのライフラインの停止という最悪の事態になりました。

【5】台風24号:首都圏初のJR計画運休、丸亀城の石垣崩落

9月29日南西諸島に再接近し、30日に和歌山県田辺市付近に上陸し、岩手県付近から太平洋に抜け温帯低気圧に変わりました。カテゴリー5のスーパータイフーンで、21号に続いて非常に強い勢力のまま日本に接近し、南西諸島や東日本の太平洋側を中心に記録的な暴風となり、最大瞬間風速が観測史上最大を記録した地点も全国55カ所ありました。

また、紀伊半島を中心に高潮となり、和歌山県串本町と白浜町では台風21号を超える過去最高潮位を記録しました。広い範囲で大雨となり、愛知県、静岡県、山梨県では記録的短時間大雨情報が発表されました。

この他、関西では複数回実施されていたJRの計画運休が首都圏では初めて実施されました。実施された9月30日が日曜日ということもあり、夜20時以降の運転を見合わせるスタイルで極端な混乱や帰宅困難者の発生は回避されましたが、翌10月1日月曜日は、始発からの運転を発表していたにもかかわらず点検に時間を要し、また、通勤時間に倒木やブロック塀の倒壊、塩害による電車の運休により、出社困難者が発生するという想定外の事態が発生しました。

洪水の川

2)平成30年の台風による災害の検証

先ほど平成30年の台風による災害をみてきましたが、この他にも多くの災害と影響が発生しました。

【1】台風による浸水害

大雨による洪水の他、西日本豪雨ではバックウォーター現象による大規模な浸水害、台風21号の関西では高潮とバックウォーター現象の複数の災害が同時に発生しています。この他にも全国各地の浸水害では、河川の氾濫と同時にバックウォーター現象の発生や停電及び長時間のポンプの使用による燃料(オイル)不足に伴う排水ポンプの停止等によって、水門が機能不全になって発生した同様の現象も報告されています。

【2】台風による強風害と停電

強風により倒木などが道路や鉄道をふさぐ被害の他、送電線を切断したり電柱が倒れることで発生する停電が多発しました。また、停電と同時に断水も多発しました。事後調査で、同時に発生した断水の9割が停電による送水管のポンプの停止が原因と判明し、水道管の破損によるものはごく僅かでした。停電と同時に発生する断水は集合住宅独特の事案と思われてきましたが、一般住宅でも起こりうることだと認識を改める必要があります。

また、あまり知られていませんが、断線による停電はケーブルテレビにも影響を与えていました。停電すればテレビを視聴することは不可能ですが、難視聴区域の解消のために導入されたケーブルテレビは地方によっては、防災行政無線の戸別受信機に利用されているものもあります。

停電時には内蔵された乾電池によって自治体の発する情報を受け取ることができるはずの受信機に、ケーブルが強風により切断されたために情報が全く届かない状況が発生していました。このような地域ではインターネットもケーブルテレビで接続していることも多く、各家庭で自家発電等の設備を整えても情報を入手することが不可能な事態になっていました。

【3】台風から離れた地域も被害発生

従来指摘されていましたが、台風は遠く離れた地域でも被害が発生することから、接近する前から十分に備え、通過後も吹き戻しの強風以外にも耐えきれなくなった樹木が倒れることが起きる可能性や、塩害など場合によっては数日後に被害が起きることも想定する必要があります。

台風の空

3)平成30年の台風被害のまとめと今後の備え

台風被害を把握することで、今後の台風に対する準備をするときの知識として役立てたいと思います。

【1】台風被害のまとめ

例年より台風の発生数も多く、また日本近海でも発達し続けながら接近するため、暴風域を伴うカテゴリー5のスーパータイフーンが上陸する亜熱帯地域に匹敵する状況になりました。風、雨ともに強く、高潮の被害も含め、観測史上記録を更新した地点も多く、洪水や浸水害、土砂崩れなどの被害も多く発生しました。また、同じコースを通ることが多く、被害が集中し、複数回発生したことに加え、従来よりも広範囲にわたって長時間、強風や大雨が続きました。

【2】台風に対する今後の備え

近年指摘されている地球温暖化による海水温の上昇によって、台風の発生が日本近海になっていることと、勢力を強めながら接近し上陸する事態はより増えると予想されます。また、台風の巨大化と発生数の増加も容易に想定され、気候変動を受入れ、備えを固めることを優先することが賢明といえます。

そして地震と異なり、台風は規模も、接近する日にち、通過するコースも予想可能な災害です。特に気象観測技術の向上と地球規模の連携によって、その精度は正確さを増しています。一方私たちは、「たぶん大丈夫」という根拠のない自信と楽観的な判断で、事前の準備を怠ったり、避難のタイミングを逸していることは否めません。

また自治体レベルにおいても、目の前の台風には対応できても、自家発電装置の整備など必要性は認識しているが、いつ使うかわからないものに対しての動きは後回しになっているのが現実です。台風に対する備えは、毎年決まった時期にしなければならないことであり、時期が過ぎれば、今後の動きを考え直すことができます。「台風」と限定することなく、予想されている大地震に対する備えに応用できるように、備えと自身の考えをアップグレードしていきましょう。

4)準備で大切にしたいポイント1:気象情報・水防情報

【1】気象情報

日頃何気なく見ている天気予報ですが、実は専門用語を駆使して解説しています。季節ごとの特徴的な気圧配置をはじめ、台風シーズンには予報円の見方や台風の勢力など、毎年わかりやすく説明しています。

気象庁の発表する注意報・警報及び各種情報は、避難するタイミングを自身で判断する目安になります。スマートフォンなどで入手することもできますが、テレビのdボタンでも情報を入手することができます。また、多くの自治体がサイト内でわかるように掲示したり、リンクを貼っています。台風が接近してから確認するのではなく、日頃からサイトにアクセスしたり、dボタンを使用して情報を入手するクセをつけておくとイザというときに役立ちます。

【2】水防警報

河川水位情報や高潮に関する水位情報もテレビのdボタンで確認することができます。国土交通省のサイトでも気象庁のサイトでも入り口は異なりますが、お互いが欲しい情報をカバーし合って、利用者には大変便利に作ってあります。使いやすい方のサイトを利用して、ご自身のお住いの地域に必要な水防警報を入手することをお薦めします。また、日頃ゆとりのある時にサイト内をじっくり見てみると定点観測のカメラなど「へ~」と思えるようなデータも見ることができます。

【3】テレビのdボタンの使い方:データ放送

テレビのdボタンを押すと、データ放送のサイトマップになっています。リモコンの矢印キーを押して、欲しい情報にアクセスできます。災害時にはテレビの画面をL字型に表示して、字幕で情報を流し続けていますが、自分の欲しい情報の時に見逃したり、自分にとって無関係の情報を見せられることにイライラすることもあります。

このデータ放送は、日頃から生活情報として河川の水位情報やpm2.5の濃度などを表示しています。放送局によっては、番組と連動して参加型のクイズを行ったり、放送中のスポーツ番組の情報提供を行っています。

災害時にはL字型画面で表示されている内容の他、登録しておくと住んでいる地域の気象情報や避難情報をわかりやすく表示します。インターネット回線を接続するとより多くの情報を入手することが可能ですが、テレビだけでも多くの情報を得ることができ、防災無線が聞き取りにくい状況の時は、大変役立ちます。高齢の方でも簡単に操作できますし、固定画面を自分のペースで何回でも読むことができます。

災害時避難所 東京都心

5)準備で大切にしたいポイント2:ハザードマップと避難所

【1】ハザードマップ

ハザードマップは災害を想定した地図です。国土交通省のサイトのハザードマップは「わがまちハザードマップ」と「重ねるハザードマップ」の両方から選ぶことができます。「わがまち」の方は自治体ごとのものをダウンロードできますし、「重ねる」の「地図を見る」を選択すると調べたい地域の洪水・土砂災害・津波から見たい項目を表示できます。

それぞれ、50年に一度または100年に一度の想定で作成されています。近年、そういった状況になることも多く、出張や旅行など不慣れな土地で被災することもあり得るので、事前の準備を行いましょう。

【2】避難所、避難経路、避難時に気をつけること

台風の接近時にふさわしい避難所を確認しておきましょう。また避難経路も複数のルートを確認しておきます。自宅付近だけでなく、職場や学校の近くなどの避難所も把握しておきましょう。そして、そこから自宅に帰る複数のルートを家族で確認しましょう。

避難するときは明るいうちに、台風の被害が発生する前に避難を完了させます。移動するときは、複数の人数で手をつなぐなど安全を最優先に行動します。地震の時には、揺れの恐怖から避難行動を起こす方が多いのですが、台風や大雨では外出するより自宅でやり過ごす発想の方が多く、避難が進まないのが現状です。台風の接近は把握できるので、被害が発生する前に避難しましょう。

西日本豪雨では避難する必要のある地域にお住いの方で、実際に避難した方は1割未満という報告もあります。「今まで、被害にあったことがないから大丈夫だと思った」とか「気付いた時には、外出不可能だった」などが理由です。一方多くの方が避難し、被害の発生がごくわずかだった地域もあります。近所や地域の役員の方が直接声をかけて誘い合って非難された地域です。早い段階で安全な時間帯に、家庭訪問をして避難を促すことで高齢の方を中心に避難が進み、大きな被害を免れました。今後の参考にしたい事案です。

6)準備で大切にしたいポイント3:情報収集・情報発信

【1】自治体の情報を受け取る

全国の気象情報や災害情報を入手することも大切ですが、やはり住んでいる地域の情報が最も有益です。多くの自治体が避難指示、避難所情報をサイトに掲載し、ライフラインに関する情報も提供しています。災害発生時はフェイクニュースや疑わしい情報もSNSで配信されます。このような情報を信じることなく、自治体のサイトから情報を入手しましょう。

この他、各自治体のサイトは随時更新され、身近な生活情報を発表していきます。台風の悪天候の中は、必要最小限の外出で事足りるように、日頃からお住いの自治体のサイトを登録しておいてください。また、交通機関の運行状況はリンクとして掲載する自治体もあります。お住いの自治体のサイトから、どんな情報を得ることができるのか確認をお願いします。

【2】救助要請を発信する

台風の接近通過に伴い、必要があれば消防署への救急要請や緊急時の自治体への連絡を取ることもあります。停電時に固定電話は多機能型やIP電話、ファクシミリでは使用することはできません。停電時に使用できる電話を確保しましょう。

携帯電話であれば、充電器を準備して、電池切れにならないようにしましょう。手回し式の充電器や、自動車のアダプターから使用できるものが有効です。複数準備して情報面での孤立を避けましょう。

【3】職場との情報交換

交通機関の停止に伴う帰宅困難、早期退社、出社困難などは、職場の規則に規定されているか、BCPの作成過程において見直しの対象となっています。今後交通機関の計画運休や、気象状況による運行停止は増えていくことが予想され、職場の管理者以外に自身も移動の判断を迫られる状況を想定する必要があります。

業務内容によっては、緊急時に出社することもあると思いますが、連絡方法を複数確保するなど、混乱を避けるための方法を可能な限り準備することが大切です。そして、どんな状況であれ家族と連絡が取れることも忘れないでください。小さいお子さんがおられるご家庭は、保育所から連絡があれば対応しなければなりません。家族のだれがどういった形で対応することが可能か、職場も含めて話し合ってみましょう。

非常持出袋

7)準備で大切にしたいポイント4:非常用持ち出しセット、非常食

台風に対する備えとして、非常用持ち出しセットや非常食を準備しましょう。従来3日分と言われてきましたが、台風による被害が多発する中で物流の停滞が指摘されています。

一昔前より家庭内の備蓄が減ったこともありますが、企業の戦略的拠点整備によって物流のネットワークがカバーする範囲外での対応に一定の時間が必要になっています。できれば、日用品も含めて備蓄は1週間を目安として準備しましょう。また、時期的に熱中症対策が必要になります。暑さ対策に必要なグッズと飲料水を十分に用意しましょう。

8)準備で大切にしたいポイント5:浸水及び停電対策

【1】浸水対策

台風は強風を伴って大雨を降らせ、河川の氾濫が発生します。また、高潮と同時に強風による吹き寄せ効果で波浪害も引き起こします。秋の大潮と重なると、満潮時の潮位が記録的な値になることもしばしばです。各家庭、企業では浸水対策が必要になります。貴重品や水にぬれると困るものを階上に移動させることはもちろんですが、特に企業や自治体においては、非常用電源や備蓄食料などの保管を地下倉庫で行うことも多く、台風時の移動は困難を極めます。

今一度保管のあり方と非常用電源など、防災品の備蓄について考え直す必要があります。この他、1階部分は受付業務を行う企業団体が多く、バリアフリー化により浸水に弱い構造になっている建物も多く見られます。各地の水害で問題となっている自治体の業務用パソコンや老人保健施設の水没など絶対に避けなければなりません。土のうや簡易水のう、止水板などあらゆる方策をとる必要があります。

【2】停電対策と災害対応施設の把握

停電は全てのライフラインの停止を意味します。自家発電で対応する家庭や企業も増えてきましたが、逆に電気なしでは何もできないことも増えています。各電力会社は災害による大規模停電の復旧目標を3日間とし、自社サイトの充実とSNSによる発信など、災害に強い体質の強化に努めています。停電時には太陽光発電システムをご利用のご家庭では、自宅用に供給可能です。経済産業省のサイトをご覧になるか、太陽光発電の企業にご確認ください。

この他、銀行の業務停止が問題になっています。銀行の窓口業務の閉鎖、ATMの停止や、小売店での電子マネーの決済もできません。台風の接近時には事前に多少の現金を持たれた方が良いと思います。

また、ガソリンスタンドは業界全体として災害対応型店舗を企業の垣根を超えて整備を始めています。他に、コンビニエンスストア各社は災害対策に力を入れています。自家発電による店舗の営業と物流の停止をなるべく回避するために、AIの導入を始めています。この他にも災害時に対応できる店舗や業種も増えています。近くの施設を確認しておきましょう。






この記事のポイント

【1】平成30年は台風が強い勢力で上陸し、多くの被害が発生しました

【2】台風による被害を把握し、今後の備えを準備するための知識とする必要があります

【3】台風の巨大化による被害の拡大を認識し、自身の備えをグレードアップしましょう

【4】災害時の情報を理解するために、気象情報など普段から接しておきましょう

【5】災害時の情報を得る手段や災害対応型の施設情報を複数確保しましょう

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